西成活裕

私が最もすごいと思う研究者は、自然の声を聴いている人です。自分のフィルターを通して環境を見るのではなく、フィルターを外して声を聴いて理論をつくる。それが一番自然で、そうでない理論をむりやり立てたとしても違和感があるのです。むりやりの理論はすぐに駆逐されてしまう。地味であっても自然にできた理論のほうが長続きします。 「けもの道」ってありますよね。ここにも人が踏み固めてできたけもの道らしきものがたくさんあるのですが、それらは人が自然にここに道があったらいいと思ってつくっている。私はそれこそが道路ではないかと思うのです。芝生に入れないように、それを迂回する舗装道路をつくったとしても、見ていれば人は芝生の上を歩いてけもの道をつくっている。 皆それがよいと思ったら、その部分は計画から隔離して考えるべきだと思います。ある程度、計画による統治された美しさも認めますが、そうではない、じわじわと生成してできた凄さが好きです。自然林と人工林の違いもそうですよね。人工林は手をかけないとすぐに枯れてしまうけれど、自然の森は手をかけなくてもすべてが絶妙なバランスでできあがっています。メインテナンスフリーで、それこそが自然の姿だと思います。